神戸昇天教会 創立120年に寄せて「何が足りないのですか」神戸教区主教オーガスチン小林尚明

5月24日(昇天後主日)神戸昇天教会は、教会創立120年を迎えます。この120年の間、教会のために働かれた多くの教役者の方々、教会を支えて来られた多くの信徒の皆さん一人一人に感謝の意を表します。これらの皆さんの働きがあって、今の昇天教会があります。

今回のコロナウイルスの感染防止のため、神戸教区のすべての教会・伝道所は共同の礼拝を自粛しています。昇天教会のこの喜びの日に、ともに集い、み言葉を聞き、祈りを献げ、聖餐に預かれないことをとても残念に思います。ただそういう時だからこそ、この「何が足りないのですか」というテーマで、主日の説教をお送りしたいと考えます。

主日の聖書日課の中に、使徒言行録1章8節~14節があります。この個所の直前には、イエス様が復活された後、四十日にわたってご自身が生きていることを使徒たちに示されたことが書かれています。そしてイエス様は、昇天の前に「あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。そして、エルサレムばかりでなく、ユダヤとサマリアの全土で、また、地の果てに至るまで、わたしの証人となる。」と使徒たちに約束されて、天に帰って行かれました。使徒たちは、イエス様がいなくなったという喪失感からずっと「天を見つめ」ていたのでしょう。その使徒たちを励ますために二人の天使は「ガリラヤの人たち、なぜ天を見上げて立っているのか。あなたがたから離れて天に上げられたイエスは、天に行かれるのをあなたがたが見たのと同じ有様で、またおいでになる。」と言いまして、イエス様の再臨を教え、励ましてくださいました。

その後のことです。使徒たちは「オリーブ畑」と呼ばれる山からエルサレムの都に帰ってきまして、泊まっていた家の上の部屋に上がります。使徒たち、婦人たち、イエス様の母親マリア、またイエス様の兄弟たちが「心を合わせて熱心に祈っていた(14節)」といいます。何を祈っていたのでしょう。勿論、昇天の前にイエス様が約束してくださった聖霊降臨とそれによって力を得た自分たちがイエス様の復活の証人として活動していけることでしょう。その熱心な祈りと神様の決められた時・五旬祭の日に約束された聖霊降臨が起こり、使徒たちは力強く立ち上がって復活のイエス様を伝え始めます。

ただ、イエス様が昇天した後、聖霊降臨日まで使徒たちは祈っていましたが、その祈りの中で一つのことが示されました。それは、イエス様を裏切り、死んでしまったユダに代わり「だれか一人が、わたしたちに加わって、主の復活の証人になるべきです。(22節)」という足りなさです。その足りなさを満たすためにみんなで相談したはずです。そして、くじ引きが行われマティアが十一人の使徒の仲間に加えられた、というのです。

昇天後主日は、聖霊降臨・聖霊なる神様の強めを求めて祈るだけではなく、自分たちの足りなさ、満たされなければならないものが何なのか考える時と思います。その足りなさをみんなで話し合い、見つけ出し、満たされた時に、より豊かな聖霊なる神様の助けを頂き「主は救われる人々を日々仲間に加え(2:47)」てくださると聖書は教えてくれているのではないでしょうか。一人の思いつきではなく、みんなの共通の理解と満たし、そこから神戸昇天教会に飛躍的な活動が起こされていくのではないか、と考えます。どうでしょうか。

今すぐ集まって、自分たちに足りないもの、満たされなければならないものを話し合うことはできません。しかし、その足りないものがあるのではないか、ということを今年の創立記念日に私からのメッセージとして皆さんにお送りしたいと思います。

もう一つ。

24日の昇天後主日は、『み国が来ますように』の祈りが献げられる主日です。昨年の神のおとずれ12月号の主教コラムと今年の5月号の同コラムにこのことを書きました。この『み国が来ますように』という運動は、昇天日から聖霊降臨日にかけて行われる、世界的な祈りの運動に付けられたタイトルです。この運動は、2016年にイギリス国教会に向けて発せられたカンタベリー大主教とヨーク大主教の呼びかけによって始められ、世界的な運動に成長しています。そして、『み国が来ますように』を祈るすべての人々がイエス様との交わりを深め、イエス様の証人となるための自信を新たにし、他の人をイエス様のもとに導くことを目的としています。お祈りの期間は、昇天日(5月21日)から聖霊降臨日(5月31日)までの11日間です。クリスチャンに導きたい家族、友人、知人5名を選び、しおりに名前を書きます。そして、その5人のために11日間祈っていくわけです。みなさんの手元に祈りのしおり、ポスター、送り状が届いていますか。このしおりを用いて、5人のために祈っていきます。十分な資料ではないかもしれませんが、5人の人たちのために祈っていく手助けになると思います。

そして24日の昇天後主日には、東北教区の吉田雅人主教様がきれいな形に整えてくださいました以下の『み国が来ますように』のお祈りを献げていただきたいと思います。

イエス・キリストの父なる神よ、『み国が来ますように』の祈りに、わたしたち日本聖公会が参加できますことを感謝します。どうかこの時にあたり、わたしたちが祈ることを通して主イエスとの交わりを深め、主を力強く証しすることができるようにしてください。またわたしたちの覚える5人の友を聖霊によって導き、この人々が主イエス・キリストに出会い、主を信じることができるようにしてください。主は父と聖霊とともに一体であって世々に生き支配しておられます。アーメン

今回のコロナウイルスの感染が収束し、皆さんのところへ巡回できる日が一日も早く来ますように、お祈りしています。