2020年5月31日 聖霊降臨日(A年)神戸昇天教会

主よ、私の岩、私の贖い主、私の言葉と思いが御心にかないますように

3月8日の礼拝を最後に、私たちの神戸昇天教会は長い礼拝の自粛期間に入りました。その期間は12週間、本日で83日を迎えました。今日の午後から臨時の教会委員会が行われ、礼拝の再開について話し合いがもたれます。

教会の信徒・関係者の皆様が心待ちにしておられます礼拝の再開ですが、この礼拝の自粛期間が私たち一人ひとりにとって信仰的な成長をもたらせる時間であったことを願っています。なぜならば、大斎節の延長のような自粛期間中は、イエス様のご復活をお祝いするイースターの喜びを教会で分かち合うことができず、モヤモヤとした気持ちで今日まで過ごされて来られた方もおられると思います。さらに、緊急事態宣言が解除された後ですが、ウイルス感染症は終息していませんから、制限された生活を強いられ、素直に喜べない状況は続いています。以前のような生活に戻りたいと願うのですが、新しい生活形態が求められています。このように新型コロナウイルス感染症によって今までとは違いう生活をおくらなければならなくなった今、この状況を受け入れなければならないのですが、それがなかなか難しいこともこれからあることでしょう。ですから、どんな困難な状況でもその生活を受け止められることが、今後の生活の重要なカギとなります。

本日の福音書は、イエス様が十字架で殺され、3日目に復活された日の夕方、恐怖に震え、誰も入って来られないように鍵をかけて家の中に閉じこもっていた弟子たちの前にイエス様が姿を現された物語でした。弟子たちはイエス様を見捨てて逃げ去ったことを非難されると思っていたかもしれませんが、予想外にもイエス様は彼らに「平和」を告げ、息を吹きかけて聖霊を受けるように勧めておられます。しかも、驚いたことにイエス様は、赦しを与えられるはずの弟子たちに向かって、誰かの罪を赦す「赦しの権威」をお与えになっているのです。それは弟子たちの罪が赦されたということを前提としています。つまり、弟子たちの不信仰と言う罪はイエス様の受難と死、ご復活によって神様から赦された、だからこそ、今度はその赦されたという神様の恵みを持って、罪ある人々を赦すために出て行きなさいと言われているのです。

イエス様は、罪が赦された弟子たちを支え、さらに強めるために聖霊を受けることを求められています。なぜなら、聖霊は神様であり、聖霊の降臨によって神様が私と共におられることは確かにされたのです。

東京の新宿・中村屋の創業者で相馬愛蔵と言う方がおられました。

相馬愛蔵は1870年(明治3年)に長野県の農家の三男として生まれ、両親は愛蔵が幼い時に亡くなりました。明治20年に東京専門学校(現早稲田大学)に入学、卒業後は、北海道の札幌農学校で養蚕学を学び、明治24年(1891年)に、故郷で蚕種製造を始めています。愛蔵は社会運動にも尽力し、22歳で東穂高禁酒会を創立し、廃娼運動、さらに孤児院基金募集の活動も行いました。仙台藩士の娘であり信仰者の星良と1898年に結婚、その後、東京に出て、明治34年(1901年)東大赤門前のパン屋、本郷中村屋を買い取り、パンの製造を始めました。明治37年(1904年)には、日本で初めてクリームパンを発売、明治40年(1907年)に新宿に移転した後、商売は大繁盛するにいたりました。さらに中村屋は日本で初めてインド式カレーライスを販売し、大人気となって行きました。

1923年(大正12年)9月1日関東大震災が襲った時、中村屋は、被災は免れましたが、社会は食料品が軒並み値上がりしました。そこで愛蔵は、中村屋の社員一同毎晩徹夜で製造を続け、「奉仕パン」や「地震饅頭」と名付けたパンや菓子を安くして販売しました。そのような姿勢にお客さんたちが感動し、震災後は大きく売り上げを伸ばしました。

相馬愛蔵の働きは、信仰に裏打ちされたものでしたが、その根幹は神様が共におられるというゆるぎない信仰が彼を支え、強めたのでした。

イエス様が弟子たちに与えた「罪の赦し」の権威を持つことは、神様に属する大きなことですし、それを他人に宣言することなど恐れ多いことです。けれども、それをイエス様は弟子たちに、クリスチャンに与えられたのです。それは弟子たち同様にクリスチャンこそ罪を赦され、神様と共にある平和を与えられたものであるからに他なりません。例え、それにふさわしくなくとも、罪多い者であったとしても聖霊なる神様が共におられることは、罪の赦された者の証拠なのです。その意味で、聖霊の降臨は、弱い私たちを清め、支え、強めてくださるのです。私たちは神様からそのような霊を与えられた者として、どのような困難にも神様への信仰の喜びを持つ者でありたいと思います。

本日の旧約聖書、エゼキエル書には、神様が私たちに神様と共にある本来の人間の真心を持たせるために、新しい霊を与えてくださると約束されていますので、最後にそのみ言葉に心を傾けたいと思います。

「わたしは彼らに一つの心を与え、彼らの中に新しい霊を授ける。わたしは彼らの肉から石の心を除き、肉の心を与える。」