2021年9月26日聖霊降臨後18主日(B年特定21)

主よ、わたしの岩、わたしの贖い主、わたしの言葉と思いがみ心にかないますように アーメン

素晴らしい品物や出来事、行動や教えと言った良いものには必ず、類似した偽物が世の中に出回るのが常のようです。例えば、ブランド品。ルイビトンやグッチなど高級品であればなおさら模倣されたまがい物が存在します。もちろん、それはそれだけ本物が素晴らしいという証拠でもありますが、所詮、偽物は偽物。やっぱり本物ではありませんから、いくらマネをしても本物には劣ってしまいます。使徒言行録19章には、こんなお話が出てきます。

ユダヤ教の祭司長の7人の息子たちが、当時、評判となっていた使徒聖パウロが行っていた悪霊追放のマネをして祈祷師になりすましていました。彼らは悪霊にとりつかれている人に向かって「パウロが宣べ伝えているイエスによってお前たちに命じる」と言って悪霊を追い出そうとしたのですが、悪霊たちは「イエスのことは知っている。パウロのこともよく知っている。だが、いったいお前たちは何者だ」と言って飛び掛かり、彼らをひどい目にあわせたので、その家から一目散に逃げ出していきました。

本日の福音書は、マルコによる福音書9章38節以下に記されてあるイエス様と弟子たちの会話でした。ある時、弟子たちがイエス様に報告しました。「先生、あなたのお名前を使って悪霊を追い出している者を見ましたが、私たちに従わないので、やめさせました。」するとイエス様はこう言われました。「やめさせてはならない。私の名を使って奇跡を行い、そのすぐ後で、私の悪口は言えまい。私たちに逆らわない者は、私たちの味方なのである。」

偽物の弟子たちが、本物の自分たちが行っている悪霊追放をマネしているのですから、弟子たちにとってはけしからんことです。今でいえば、明らかな「営業妨害」と言えるでしょう。ですから、自分たちの許可なく勝手に悪霊追放の営業を行っている偽物の悪霊追放業者に営業の差し止め、行為の禁止を命じることは当然のことだと弟子たちは思っていました。けれども、驚いたことにイエス様は、二番煎じの偽業者をとがめることなく、むしろ、そのまま放置するように言われたのです。弟子たちはイエス様の人の好さに呆れたでしょうが、きっとイエス様には、使徒言行録にあるように彼らがひどい目にあわされる結末をご存じだったのかもしれません。それでも「逆らわない者は、味方である」と言うイエス様の教えは、現代にも通じる度量の広さを感じます。

キリスト教会の歴史は、類似品つまり異端との闘いの歴史でした。つまり、異端がいたからこそ、本物を極めていくことができたのです。その間、次々と類似したキリスト教は誕生しましたが消滅していきました。その理由は、神様がおられない宗教であったからに他なりません。確かに、日本のキリスト教は人口の1%にも満たない小さな群れですが、神様が作られた、神様が共におられる教会は滅びることはないのです。今、コロナ禍という困難にありますが、この世の何ものにも勝る神様が共にいてくださるのですから何も恐れることはないのです。

本日の使徒書の中で、弱い私を強めてくださる神様について教えられていますので、最後にそのみ言葉に心を傾けたいと思います。

「主の前にへりくだりなさい。そうすれば、主があなたがたを高くしてくださいます。」ヤコブの手紙4章10節