2021年5月9日 復活節第6主日(B年)

主よ、私の岩、私の贖い主、私の言葉と思いが御心にかないますように

緊急事態宣言から2週間が経ち、今月末までの延長が決定しました。テレビの報道を見ても、長引くコロナ禍にあって人々の不安と不満は高まり、その怒りは国の指導者である政治家に向けられているようです。もちろん、世界中の指導者がコロナ禍終息のためにその地位についたわけではないでしょうから「大変な時に就任してしまった」と後悔しているかもしれません。しかし、それを神様の召命だと積極的に受け止められる人は、そう多くはいないと思います。

本日の福音書は、ヨハネによる福音書第15章9から17節でしたが、その中でイエス様は、天に昇られる前、この世に残していく弟子たちに対して「あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだ。あなたがたが出かけて行って実を結び、その実が残るようにと、また、わたしの名によって父に願うものは何でも与えられるようにと、わたしがあなたがたを任命したのである。」と教えられています。

当時、何かを学びたいと思った弟子志願者は、これぞと思う高名な師匠のもとに行きました。ですから、イエス様のように師匠からわざわざ弟子になるようにスカウトすることはありません。けれども、イエス様は神の国の福音を伝えるために裏切り者のユダを含めた12人を選ばれたのです。それもまた神様のご計画であったと言うことなのです。

日商岩井の社長、経済同友会代表幹事、東京女子大学理事長、第28代日本銀行総裁などを歴任した神戸市出身の速水 優(はやみ・まさる)さんと言うクリスチャンの方がおられました。経済学者の翁氏は「速水は金融政策については『信念の人』だった。速水が総裁に選ばれたのは、その前に旧大蔵省・日銀の接待汚職が発覚したことが大きく影響していた。それを踏まえて速水が敬虔なクリスチャンで高潔な人物であることを重視し、高齢で日銀を去ってから20年近いブランクがあったにもかかわらず担ぎ出された」と述べています。 (ダイヤモンドオンライン2013/4/12)

そんな速水さんが、日銀総裁の就任を問われた時のことを振り返ってインタビューに答えられています。「大変難しい時代で、自分でやれるかどうか迷ったのですが、いろいろ考えて神の召し、Calling、神が呼んでおられるのだと信じて受けました。…神は自分を用いて仕事をなさろうとして力を与えてくださるのだと言うことを信じて、総裁時代も、国会に出て難しいことを聞かれても、自分がこうだと思ったことをYesかNoかをはっきり言うように努力しました。」(「100人の聖書」より)

困難な時には将来に大きな影響をもたらすかもしれない重大な決断をする立場に就くことを誰もが避けたいと願うものです。しかし、神様はしばしばそれを求められることがあります。失敗するかもしれないと言う不安を前にして最も強い支えになるものは神様が共にいてくださると言う信仰です。この信仰が歴史の中で重要な決断を支えてきました。もちろん、私たちは世界を動かす大きな決断をする立場にはありませんが、それでも先の見えない不安と恐怖は存在しています。そして、その場合でも神様への信仰は弱い私を支え、励まし、強めてくださるのです。どんな困難の中でもこの神様への信仰によっていつも喜べる者でありたいと思います。

本日の旧約聖書イザヤ書45章で、預言者イザヤは、神様によって選ばれた指導者によって主の救いのご計画が実行されることを語っていますので、最後にそのみ言葉に心を傾けたいと思います。

「わたしは正義によって彼を奮い立たせ、その行く道をすべてまっすぐにする。彼はわたしの都を再建し、わたしの捕らわれ人を釈放し、報酬も賄賂も求めない。万軍の主はこう言われた。」イザヤ書45章13節