2019年8月より12回に渡り連載して参りました「みことばの力」に変わり、2020年8月より一年間の特集として「聖書を理解するための基本用語(12編)」を掲載させて頂きます。今回の連載に際しましては、日経BP編集部並びに執筆者の桃山学院大学准教授 齋藤かおる様のご快諾を頂戴する事が出来ました。心より感謝申し上げますとともに貴重な情報(知識)を通してHP来訪者の皆様に聖書へのご興味が深まれば幸いです。

神との契約

聖書に冠される「旧約」「新約」の「約」とは、契約の意である。神から恩寵を受ける代わりに、神に授けられた掟を守り、神への誠実な信仰に生きるという、ある種のギブ&テイクの関係が成立している。「対等ではあり得ない神と契約を結ぶという点に、神(永遠・絶対・自由)を問わずにいられない人間存在の本質が垣間見える」と齋藤さん。旧約では、イスラエル(ユダヤの民)を率いエジプトを脱出したモーセが、神と契約を結んで、十戒と掟を記した2枚の石版を授かる。それがユダヤ教の律法の基となる。その後、苦難の歴史に翻弄され続ける中、イスラエルは、「神との契約に不誠実に歩んでしまったせいではないか」と苦悶しつつ、預言者たちによるメシア(救い主)到来の預言に望みを抱くようになる。そして、新約。神の子として誕生したイエスが、自らの身にすべての人々の罪を負い十字架にかかることで、この世のすべての人々に救いをもたらす「新しい契約」が成立するに至る。キリスト教信仰の出発点である。

日経おとなのOFF 2011年3月号掲載内容より【監修・執筆】桃山学院大学准教授 齋藤かおる様のご許可を頂き原文のまま掲載しております。

愛=アガペー

キリスト教は、「愛(アガペー)の宗教」だと言われる。それは、何よりもイエスの十字架の死が、すべての人間に救いの道を開く、神の愛を示しているからである。また、聖書が伝えるイエスは、「隣人を自分のように愛しなさい」「敵を愛し、あなたがたを憎む者に親切にしなさい」「互いに愛し合いなさい。これがわたしの掟である」「わたしの掟を守るなら、わたしの愛にとどまっていることになる」と愛すべきことを繰り返し命じているからである。そして、その際に用いられている「愛」が、ストルゲー(肉親愛)やフィリア(友愛)やエロース(情愛)でなく、アガペー(聖愛)というギリシャ語だからである。良くも悪くもコントロールのきかない(人間サイズの)3つの愛を超え、イエスに倣(なら)いつつアガペーの愛に生きてゆくべきこと、そして、アガペーの愛のあるところには神がいること、それがキリスト教のメッセージである。ちなみに、英語のチャリティ(charity)は、アガペーのラテン語訳であるカリタスの意を継いでいる言葉である。

日経おとなのOFF 2011年3月号掲載内容より【監修・執筆】桃山学院大学准教授 齋藤かおる様のご許可を頂き原文のまま掲載しております。